バンドジャーナル11月号記事



先々月号で紹介したパーカッショニスト、大久保宙氏が新たに教則本を著わした。
 今回は「スネア・ドラムのためのデュエット&アンサンブル」

 大久保氏によれば、「高校生時代にはアンサンブル集がなかったので同じ譜面を友だちとユニゾンしていましたが、アメリカの大学で打楽器アンサンブルの存在を知り(中略)いくつかのスネア・デュエットを勉強しました。しかし、日本にこのような教本が無かったので長年の構想をまとめました。(中略)基礎練習等の合間に手軽に練習でき、楽しみながらスネアの基本とアンサンブルを学んで頂けることを望んでいます。」ということで、内容は初心者〜中級者向けなので、スクールバンドでの練習もしくは個人練習に向いている。大久保氏自身も、打楽器奏者として、ビート感やリズム感を養うにはやはりスネア・ドラムで練習するのが最適と強調している。
 また、一人でも練習できるように、付属CDには、各曲ともアンサンブルの模範演奏・各パートのマイナス・ワンが含まれている。デュエットも3パート以上のアンサンブルも全てのパートと一緒に練習できるという配慮がされているので、是非お試し頂きたい。
 そして、その大久保氏が9月20日にソロ・コンサートを行うというので足を運んだのだが、すごい体験をしてしまったのである。
 当日会場に入るなりまず目に飛び込んできたのは、所狭しと並べられた打楽器群だった。民族楽器にドラムセット、そして台所用品…?
本当にこれだけの打楽器をたった一人で演奏できるのだろうか?本当は3人くらい出演するのでは?しかもなんだかパソコンが2台並んでいるし…と言うか本当にパーカッショニストのソロ・コンサートなのだろうか?
 まるで「叩けば音が出る物なら何でも揃えました」位の感があるし…など、始まる前にこんなに考え込んだのも珍しいな、と自分自身奇妙な気持ちのままオープニングを迎えた。
 まず体の動きにセンサーが反応して音が出るMIBURI(彼は世界初のMIBURI奏者である)から始まり、次に民族楽器群へと移動。とても紹介しきれない程の楽器を演奏したのだが、細かくは写真を見て頂くとして、中でも興味を引いたのは彼もMCで紹介していた「タール」。当日使用したのは桶をくり抜いてヘッドを張った物だが、これは彼が最初に体験した(授業で習った)民族楽器で、「ドゥン、ター、パッ」という3つの音色を、口で「タキタ・タキタ…」と言いながら演奏するのだが、数を表す言葉らしく、いわゆる拍子を取りながら演奏するのだそうだ。
 そして10種類以上のタンバリン。クラシックから民族音楽用まで、様々な国の物があり、筆者も初めてこれだけの種類のタンバリンを同時に聞き比べることができたのは初めてだった。特に印象的だった物が2つあり、まずパキスタンのタンバリンで、特徴的な音色がした。「形は大きいが、かわいい音色」と大久保氏は表現していたが、筆者にはそれとは別に、「少し乾いた大地の音」という印象も持った。
 そして大久保氏のオリジナル特注タンバリン!世界中の殆どのタンバリンの要素を組み入れた物で、1つの楽器で何種類もの音色が出せる優れもの(お買得品?)で、様々なタンバリンでアンサンブルをしているかの様だった。
そして彼が最近こだわっているという「楽器ではない打楽器」コーナー。特に台所用品の充実ぶり(?)は目を見張るばかりで、音階を作れる程の数のフライパンやボールでなんと旋律を奏でていた!
 そして最後に通常の3倍くらいの規模のドラムセットでの演奏。これでも最近は数を減らした(笑)そうなのだが、台所用品同様打楽器で音階を作るのにこだわっているようでタムとシンバルはひとつひとつ音程が違っていて、まるで鍵盤楽器とドラムを融合させたような演奏には、迫力を通り越して壮大な世界観を感じた。
 終了後、「打楽器奏者になりたかった」と思わされてしまった…それほどまでに魅力的な世界を見せ付けられてしまったのである。管楽器は突き詰めていくとSimpleになって行きがちなところだが、打楽器の世界は放射状に広がっていくんだなぁと…大久保さん素晴らしいです!
詳しくは⇒http://www.miburi.org/


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